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緩和ケア看護学分野
スタッフ
田村 恵子 教授
恒藤 暁 教授
白井 由紀 准教授
井沢 知子 助教
研究室webサイト http://palliative-ns.hs.med.kyoto-u.ac.jp/
分野の紹介
わが国の緩和ケアは、これまでがん医療を中心に発展してきました。しかし、緩和ケアはがん患者だけではなく、がん以外の疾患の患者にも必要であることが広く認識されるようになり、2018年には末期心不全患者の緩和ケアが診療報酬上認められるようになりました。また同年、世界保健機構は、緩和ケアの定義を「生命をおびやかす病に関連する問題に直面している成人と小児の患者およびその家族の苦痛を予防しやわらげることである。これらの問題には、患者の身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛、そして家族の精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛が含まれる」と改訂しました。緩和ケアは、身体的・精神的症状の軽減を主軸とする症状マネジメントに焦点があてられることが多いですが、その本質は、病むことや死と向き合うことを余儀なくされ、苦悩し、これからの人生をどう生きるかについて思い悩む人々に寄り添い、共に歩んでいくことにあります。
緩和ケア看護学分野は、緩和ケアを必要とする患者や家族の「苦痛へのアプローチ」と「QOLの向上」を目指して看護の視点から研究を続けています。
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佐瀬恵理子先生(ジョージタウン大学ケネディ倫理研究所)によ
プロジェクト
現在、本研究室が主催および参画しているプロジェクトです。
- ともいき京都 http://tomoiki-kyoto.net/
- 看護師実践に活かせるスピリチュアルセミナー http://palliative-ns.hs.med.kyoto-u.ac.jp/event/index.html
- ELNEC-Jコアカリキュラム指導者養成プログラム(日本緩和医療学会)https://www.jspm.ne.jp/elnec/elnec_about.html
- ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラム(京都大学医学部附属病院、京都府)http://www.kuhp-education.jp/assets/files/kousyukai/20200119KyotoUnivELNEC.pdf
- 専門的緩和ケア看護師教育プログラム(日本ホスピス緩和ケア協会)https://www.hpcj.org/med/space_n.html
- 患者–医師間のコミュニケーションの質の向上を目的としたコミュニケーション技術研修会(日本サイコオンコロジー学会、日本緩和医療学会)http://www.share-cst.jp/
- がん医療におけるコミュニケーションガイドラインの作成(日本サイコオンコロジー学会、日本がんサポーティブケア学会) http://jascc.jp/groups/psychology/
- Effectiveness of Palliative Care interventions in Intensive Care unit patients: Systematic review award by the European Society of Intensive Care (PROSPERO: CRD42018094315)s
- Cross cultural translation and validation of the Integrated Palliative Care Outcome Scale (IPOS) for the Greek population
- European Guidelines for Palliative Care Nursing education
- Impact of Advanced Care Planning on End of Life Care, in intensive care (Kakenhi 18K17320)
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教育内容
学部では、成人期から老年期の人々を主な対象とした、がん看護学、老年看護学を担当しています。3年次の「成人看護学Ⅲ」「緩和ケア論」では、専門看護師や認定看護師、緩和ケアチーム医師、医療ソーシャルワーカーなど様々な職種によるオムニバス講義を中心に、患者ケアや包括的チームアプローチを学びます。「成人看護学実習Ⅲ」では、高齢者施設と京大病院での実習を通してがん看護学や緩和ケア、老年看護学についてさらに学びを深めます。4年次の「統合実習」では、当教室のゼミ生(当教室で卒業研究に取り組む学生)を対象に、京大病院緩和ケアチーム、京大病院小児ピアサポートグループ、ホスピス・緩和ケア病棟の見学実習、ともいき京都(がん体験者・家族、市民が相互に支え合う地域コミュニティ)での実習を行い、患者・家族を支える緩和ケア提供体制について学びます。「統合看護」では、おもに緩和ケアに関するテーマで卒業研究に取り組みます。
大学院では、がんや非がんの緩和ケアやEOLにおけるケアを専門とする研究者養成プログラムとがん看護専門看護師を育成するための高度実践研究者養成プログラムがあります。どちらのプログラムも初めに緩和ケアやトータルペインの概念、緩和ケアの歴史や時代と共に変遷するEOLの状況と緩和ケアが提供されるシステムといった緩和ケアの基盤について理解を深めます。次にエビデンスに基づいた看護実践の方法を基に、体系化した緩和ケアの知識を学びます。これらの基盤となる知識を習得した上で、EOL期におけるがん患者と家族の苦痛をケアし、希望を支える多様な緩和ケア提供体制のあり方、ACPに関すること、緩和ケアに関わる看護師の能力開発など、多面的な角度から緩和ケアの研究を行っています。本研究室では、緩和ケアや医療倫理に精通した国内外からの外部講師を招いた講義も開催しており、常に新しい知見を学ぶ機会を設けています。
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編集および執筆を担当した教科書
研究内容
がん及び非がん、老いに伴って生ずる全人的な苦痛に対する緩和ケア、エンド・オブ・ライフケアにまつわる医療や看護の課題をテーマとした研究に取り組んでいます。
1)卒業論文のテーマ
2021年度
- 独立型緩和ケア施設における看護師と管理栄養士の介入の実際~消化管閉塞をきたした終末期がん患者の「食べたい」思いを支えるケア~
- 終末期がん患者に関わりを拒否された際の熟練看護師の対応
- 失語症を有する脳血管疾患患者が地域で生活することを支える各職種の関わり:文献検討
- 看護師の捉える青年期がん患者の治療生活における主体性
2020年度
- 補完代替療法(CAM)の選択におけるがん患者と家族のゆらぎ
- 看護師ががん患者の言語化されない思いをくみ取る際の視点:質的研究
2019年度
- 入院化学療法中のがん患者にとっての家族の存在–青年期の子供がいる家族との関わりで支えになったこと–
- がん患者の怒りの成り立ちに関する文献検討
- 終末期がん患者のスピリチュアルペインに対するケアの現状
- 軽度認知症を有するがん患者に対する病棟看護師の在宅療養移行支援
- 我が国における引きこもり状態にある者の家族が抱える困難とそれに対する支援の現状と課題
- 我が国におけるマインドフルネスの有用性の現状と課題
- わが国における終末期医療に携わる看護師が抱く困難の現状と課題
2018年度
- 緩和ケアチーム看護師の心不全緩和ケアにおける困難
- AYA世代にがんに罹患したサバイバーによるがん体験の意味付けの変遷
- 在宅看護における看取りパンフレット活用の実態:質的記述的研究
- 終末期がん患者と家族で療養の場の意向が異なる場合における看護師の意思決定支援
- 終末期がん患者の在宅移行支援における退院調整看護師と病棟看護師の担う役割と相互に期待する役割
- がんサバイバーが体験した入院治療中の苦痛が大きい場面における看護師の関わりと関わりに対して抱く思い
- セルフケアによる医療従事者のバーンアウト予防に関する文献検討
- 日本の女性看護師におけるライフイベントがキャリア選択に与える影響に関する文献検討
- 本邦における新人看護師の離職の要因とその防止対策に関する文献検討
2)大学院生研究テーマ(研究室のテーマも含む)
- 血液疾患患者の造血幹細胞移植決定に至るまでの体験
- 進行がん患者に対するSpiPasを用いたスピリチュアルケアの有効性:非ランダム化比較対象試験
- 終末期直前の希死念慮を生み出す苦痛の複雑性:探索的研究
- 終末期がん患者の家族のスピリチュアルペインについて
- がんで配偶者を亡くした遺族の心的外傷後成長のプロセスと構成要素:現象学的アプローチ
- がん看護専門看護師の進行がん患者の支援に対する「Hope for the best, and prepare for the worst」の支援に関する質的研究
- がん患者とのEnd-of-life discussion:看護師によるEOLd開始のタイミングに焦点をあてて
- ライフストーリーから読み解くAYA世代がん患者の自律性の在り様
- 市民と専門職で協働する日本型対話促進ACP介入モデルの構築とエビデンスの確立(パイロットスタディ)
- Community-Based Participatory Research に基づくがん体験者のための対話型支援モデルの検討
- AYA世代がんサバイバーのリプロダクティブヘルスに向けたエンパワメントプログラムについて
- 在宅における心不全患者のACPについて