Kyoto University Advanced Nursing Sciences

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在宅医療・認知症学分野

スタッフ

木下 彩栄 教授

鳥井 美江 助教

研究室webサイト http://kinoshita-lab.hs.med.kyoto-u.ac.jp/index.html

分野の紹介

 私たちは、たとえ病を持ちながらも、自分らしい人生を生きる権利があります。超高齢社会に突入した日本では、病気とともに生きていくということが時に必要になっています。中でも、認知症は2025年に700万人の人が罹患するとされており、誰もがかかりうる疾患であると認識されるようになってきました。
このように、認知症に対するケアは急務になっています。認知症に限りませんが、人は老いて病をもったとき、どこで療養生活を送るのでしょうか?厚生労働省は、高齢者や病を持つ人が、住み慣れた地域で安心して暮らせるように、在宅医療を推進しています。

 在宅医療看護学分野は、そのような地域包括ケアの中心となる、訪問看護や訪問診療、また高齢者のための介護施設などにおいての穏やかで安心できる生活を守ることを学ぶ分野です。また、慢性期の疾患、特に上述の認知症や関節リウマチといった疾患に対する新しいケアを開発していく分野です。

人間健康科学科における在宅医療看護学分野の特徴

本分野では、認知症の研究や在宅看護の研究などの臨床研究から、病態を解明するための基礎研究まで幅広く研究を展開しています。

人間健康科学科を中心にと、京大病院脳神経内科の研究グループ、京大病院リウマチセンターの研究グループが連携して研究を行っています。また、人間健康科学科の中の他コースや医学研究科の産学連携部門、企業との共同研究、他大学などとも共同プロジェクトを展開しています。

教育内容(授業・演習・実習)

授業は、一通りの看護の基礎・臨床看護を学び終えた3回生後期に在宅ケアの基本を学ぶ「在宅ケア論」を行っています。在宅ケアに必要な知識を教授するとともに、学外の講師の先生より、訪問看護ステーション、終末期医療、退院支援などのリアルな現場について学ぶことができます。「在宅看護論演習」では、これら知識を統合し、実習に向けて応用するための事例検討や技術確認を行っています。「在宅看護論実習」は、京都市内の訪問看護ステーション、介護老人保健施設、認知症患者のためのグループホーム、デイケアセンター、京大病院地域ネットワークなどで行われます。


高齢者施設における実習
(レクリエーションを担当している様子)

木下は、全学共通科目、全専攻横断的な疾病論、総合医療科学コースの特別セミナーでも教育を担当しています。

研究内容

1)臨床研究

  • 認知症・在宅ケアに焦点を当てたさまざまな研究を展開しています。非薬物療法の研究(運動療法、音楽療法、回想法など)や、認知症の方のIADL(手段的日常生活活動)の評価の研究、認知症の言語機能の研究、認知症の方が使いやすいインターフェースを追求する産学連携的研究、ICTを用いた介入研究などを展開してきました。近隣の病院、他大学、企業の方との共同研究を推進しています。

Tabletを使った遠隔支援の研究
しゃべり言葉からの語彙力測定
家電製品使用能力の分析
  • 関節リウマチ患者さんを対象にサルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドローム、カヘキシアについて研究をしています。京都大学医学部附属病院リウマチセンターで実施しているKURAMAコホートにおいて関節リウマチ患者さんの診療データ、血液サンプル、筋肉量、活動量、栄養状態などからサルコペニアのリスク因子を調べています。今年度より関西の6大学とその関連施設で実施しているANSWERコホートにも参加して研究を行います。
筋肉量の調査の様子

2)基礎医学的研究

アルツハイマー病の病態とかかわる老人斑、神経原線維変化の沈着のメカニズムを解明し、創薬や効果的な介入に結び付けるための基礎医学的な研究を、培養細胞、マウスを用いて分子生物学的手法を用いて行っています。人間健康科学科にいる利点を生かし、生活習慣病や運動介入のアルツハイマー病への影響をin vivo, in vitroのレベルで検証しています。


老人斑

神経原線維変化
その他
  • 2012年より、京都市の繁華街に存在する下京区の学区と連携して、物忘れ早期発見プロジェクトである「あんしん相談会」を開催しています。

  • 産学連携プロジェクトの推進(紛失物探知機開発)、異分野(企業・デザインなど)との勉強会なども行っています。
  • 認知症サポーター養成講座、認知症サポーターキャラバン養成講座などの講師を務めています。

3)学部卒論テーマ (2018, 2019年度)

  • グループホームにおける調理活動の調査
  • 音楽療法のBPSDへの効果
  • 関節リウマチ患者の不安・抑うつに関する研究(KURAMAコホート研究)
  • バイオマーカーで確定診断されたアルツハイマー病患者の漢字能力に関する研究(漢字検定―京都大学プロジェクト KKP)
  • 抗てんかん薬がアミロイドβ産生へ与える影響
  • アルツハイマー病患者の髄液BACE活性に関する研究
  • 運動関連myokineであるirisinがAβ産生を抑制する機序の解明
  • Word fluency testで発出される野菜の名前の質的分析
  • 訪問看護における認知リハビリテーションの現状

4)大学院生研究テーマ  (医学科大学院生を含む)

  • 体動センサーに対する看護師の意識
  • 急性期病院の倫理的風土の研究
  • 方言を用いた介入の認知症患者への効果
  • バーチャルリアリティを用いた回想法の効果に関する研究
  • 認知症患者の自動車運転能力に関する研究、
  • アルツハイマー病患者のIADLの新規評価手法の開発
  • アルツハイマー病患者の認識しやすい家電製品インターフェースの研究
  • 新規BACE結合タンパク質SV2Bについての研究
  • アルツハイマー病原因タンパク質tauの新規機能に関する研究
  • アルツハイマー病Aβタンパク質がOligodendrocyte precursor cell に与える影響
  • アルツハイマー病とてんかんに関する研究
  • アルツハイマー病原因遺伝子プレセニリンのニトロ化についての研究
  • 運動により放出されるmyokineであるirisinがアルツハイマー病Aβの産生を抑制する機序の解明

業績 (2018年~)

  • Ken Yasuda, Takakuni Maki, Hisanori Kinoshita, Seiji Kaji, Masaru Toyokawa, Yusuke Kinoshita, Yuichi Ono, Ayae Kinoshita and Ryosuke Takahashi .Sex-specific differences in transcriptomic profiles and cellular characteristics of oligodendrocyte precursor cells.Stem Cell Research 2020 (in press)
  • Kitajima M, Miyata C, Tamura K, Kinoshita A, Arai H. Factors associated with the job satisfaction of certified nurses and nurse specialists in cancer care in Japan: Analysis based on the Basic Plan to Promote Cancer Control Programs. Plos ONE 2020 (in press)
  • Miyamoto M, Kuzuya A, Noda Y, Ueda S, Utsugi-Asada M, Ito S, Fukusumi YY, Kawachi H, Takahashi R, Kinoshita A. Synaptic vesicle protein 2B negatively regulates the amyloidogenic processing of AβPP as a novel interaction partner of BACE 1. Journal of Alzheimer’s Disease. 2020 (in press)
  • Okumoto A, Miyata C, Yoneyama S, Kinoshita A. Nurses’ perception of the bed alarm system. SAGE Open Nursing Vol 6 2020.https://doi.org/10.1177/2377960820916252 
  • Murakami I, Murakami K, Hashimoto M, Tanaka M, Ito H, Fujii T, Torii M, Ikeda K, Kuwabara A, Tanaka K, Yoshida A, Akizuki S, Nakashima R, Yoshifuji H, Ohmura K, Usui T, Morita S, Mimori T.. Intake frequency of vegetables or seafoods negatively correlates with disease activity of rheumatoid arthritis. PLoS One. 2020;15(2):e0228852. Published 2020 Feb 13. doi:10.1371/journal.pone.0228852
  • Nishimoto H, Koyanagi T, Sarata M, Kinoshita A., Okuda M. (2019) “Memes” UX-Design Methodology Based on Cognitive Science Regarding Instrumental Activities of Daily Living. In: Duffy V. (eds) Digital Human Modeling and Applications in Health, Safety, Ergonomics and Risk Management. Healthcare Applications. HCII 2019. Lecture Notes in Computer Science, vol 11582. Springer, Cham
  • Jingami N, Uemura K, Asada M, Kuzuya A, Yamada S, Ishikawa M, Kawahara T, Iwasaki T, Atsuchi M, Takahashi R, Kinoshita A. Two-Point Dynamic Observation of Alzheimer’s Disease Cerebrospinal Fluid Biomarkers in Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus. Journal of Alzheimer’s Disease. Vol 72, pp271-277, 2019
  • Torii M, Hashimoto M, Hanai A, et al. Prevalence and factors associated with sarcopenia in patients with rheumatoid arthritis. Mod Rheumatol. 2019;29(4):589‐595. doi:10.1080/14397595.2018.1510565
  • Nakagami Y, Sugihara G, Takei N, et al. Effect of Physical State on Pain Mediated Through Emotional Health in Rheumatoid Arthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2019;71(9):1216‐1223. doi:10.1002/acr.23779
  • Noda Y, Kuzuya A, Tanigawa K, Araki M, Kawai R, Ma B, Sasakura Y, Maesako M, Tashiro Y, Miyamoto M, Uemura K, Okuno Y, Kinoshita A.  Kinoshita A. Fibronectin type III domain-containing protein 5 interacts with APP and decreases amyloid β production in Alzheimer’s disease. Molecular Brain2018 Oct 24;11(1):61.doi: 10.1186/s13041-018-0401-8.
  • Shibata D, Ito K, Nagai H, Okahisa T, Kinoshita A, Aramaki E. Idea density in Japanese for the early detection of dementia based on narrative speech PLoS One. 2018; 13(12): e0208418.
  • Uemura MT, Ihara M, Maki T, Nakagomi T, Kaji S, Uemura K, Matsuyama T, Kalaria RN, Kinoshita A, and Takahashi R. Pericyte-derived Bone Morphogenetic Protein 4 Underlies White Matter Damage after Chronic Hypoperfusion. Brain Pathology 2018 28: 521–535.
  • Sakai M, Ueda S, Daito T, Asada-Utsugi M, Komatsu Y, Kinoshita A, Maki T, Kuzuya A, Takahashi R, Makino A, Tomonaga K. Degradation of amyloid β peptide by neprilysin expressed from Borna disease virus vector. Microbiol Immunol. 2018 May 17. doi: 10.1111/1348-0421.12602
  • Morita Y, Ito H, Torii M, et al. Factors affecting walking ability in female patients with rheumatoid arthritis. PLoS One. 2018;13(3): e0195059. Published 2018 Mar 27. doi:10.1371/journal.pone.0195059