Kyoto University Advanced Nursing Sciences

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高度実践研究者養成プログラム専門看護師課程

高度実践研究者養成プログラム専門看護師課程の概要

わが国の医学・医療はめざましい進歩を遂げ、新たな医療が創生される時代に入りました。

今後さらにこれらの医療を発展させるためには、高度医療専門職の存在が不可欠であり、その一翼を担うべく2018(平成30)年度より、高度実践研究者養成プログラム専門看護師課程を開設しました。本課程では、看護学の視点から、高度先端医療を受けた患者が疾病や障害と共生しながら、患者・家族が望む状態でその後の生活や人生を過ごすために必要なケアを実践する高い実践能力と指導力を備え、かつ豊かな人間性を身につけた実践者を育成します。そして基礎と臨床の融合、および異なる領域との連携など、京都大学の知財を活用して新たな展開を担う研究者の育成を目指して、後期博士課程への進学を推進しています。

高度で専門的なケアを自ら提供し、それらの成果を研究者として世界に発信する新しい看護専門職のリーダーを目指して共にチャレンジしましょう。

スタッフ

・がん看護専門看護師養成課程 <緩和ケア看護学分野>

研究室ホームページ http://palliative-ns.hs.med.kyoto-u.ac.jp/

宮下 美香 教授

白井 由紀 准教授

・慢性疾患看護専門看護師養成課程 <生活習慣病看護学分野>

研究室ホームページ http://lifestyle-related.hs.med.kyoto-u.ac.jp/index.html

和子 教授

清水 彬礼 助教

古谷 和紀 助教/老人看護専門看護師

・急性・重症患者看護専門看護師養成課程 <クリティカルケア看護学分野>

研究室ホームページ https://criticalcare.link/

西山 知佳 准教授

榊 由里 准教授/急性・重症患者看護専門看護師

・精神看護専門看護師養成課程 <精神看護学分野>

研究室ホームページ https://psych-nurs.hs.med.kyoto-u.ac.jp/index.html

千葉 理恵 教授

三井 督子 助教

山之内 智子 助教

専門看護師(Certified Nurse Specialist)とは

専門看護師制度とは、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的として日本看護協会によって設立されました。

専門看護分野とは、変化する看護ニーズに対して、独立した専門分野として知識及び技術に広がりと深さがあると日本看護協会専門看護師制度委員会が認めた分野になります。現在は13分野(がん看護精神看護、地域看護、老人看護、小児看護、母性看護、慢性疾患看護急性・重症患者看護、感染症看護、家族支援、在宅看護、遺伝看護、災害看護)があります。下線分野は本学での教育分野です。

専門看護師は、専門看護分野において以下の6つの役割を果たします。

  1. 個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する。(実践)
  2. 看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う。(相談)
  3. 必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う。(調整)
  4. 個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る(倫理調整)
  5. 看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす(教育)
  6. 専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動をおこなう(研究)

ダブルアポイントメント教員とは

ダブルアポイント教員とは、大学と病院で兼務する教職員のことを指します。20174月より京都大学医学部附属病院と京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻が協議し、この職位が発足しました。ダブルアポイント教員は専門看護師の資格を有しており、病院では、臨床現場で専門看護師としての高度実践を行い、大学では主に高度実践研究者養成プログラム専門看護師課程の指導教員として勤務しています。

各養成課程の紹介

がん看護専門看護師養成課程

<カリキュラム概要>

病態生理学、臨床薬理、フィジカルアセスメントの3つのPを根底に、がん看護特論(がんの病態や治療)、がん看護学特論(がん看護や緩和ケアに関連する理論の学習)、がん看護学特論(トータルペインの視点から看護技術の習得やQOL向上のためのケア開発)でがん看護の根幹を学びます。その上で、本学で専門領域としている緩和ケアに関する理解を深めます。緩和ケアは、特論(緩和ケアの概念や症状緩和)、特論(多職種による専門的緩和ケア、コミュニケーション)で構成されており、履修内容は緩和ケアを幅広く網羅しており多岐に渡ります。臨床で活躍するがん看護専門看護師や外部の専門家による講義での議論を通して学びを深めます。講義と同時期に演習を行い座学での知識を、実践に結びつけられるように高度実践能力を養います。

高度実践実習はで構成されており、3週間の医師からの医行為のシャドーイング及び直接ケアを中心とした実習)、2週間のOCNSのシャドーイング実習)、Ⅲa,ba,1週間の在宅実習,bがんサバイバーシップを学ぶ実習)、3週間の高度実践の統合実習)となります。

<実習施設>

京都大学医学部附属病院(実習

京都第二赤十字病院(実習

渡辺在宅緩和ケアクリニック(実習Ⅲa

金井病院(実習Ⅲa)

ともいき京都(実習Ⅲb

<修了生の動向>

2019年度に修了生が1名誕生し、現在プレOCNSとして臨床現場で活躍しています。

<院生の声>

このコースでは、がんを患う人々へのCureCareの統合を目指し、講義や実習はもちろん研究にも力を注いでいます。質の高いがん看護・緩和ケアとCNSの役割を探求する日々はとてもハードですが、学びが多く充実しています。(修士2回生)

慢性疾患看護専門看護師養成課程

<カリキュラム概要>

慢性疾患看護の専門科目は、「特論」「演習」「実習」で構成されています。

「特論」では、慢性病者や家族が抱える慢性病特有の複雑で解決困難な問題とその背景について学ぶとともに、慢性病者の理解に役立つ概念および理論、心理や行動を理解するための諸理論および行動分析、治療や療養を支える治療環境および地域支援、医療・福祉の制度や体制などについて幅広く学修します。「演習」では、慢性病者の様々に変化する時期、複雑な状態に応じた身体・心理社会面を含めた包括的ヘルスアセスメントの能力、支援技術を養いながら、慢性病者に対する高度看護実践を探求します。「実習」では、実習で医療機関の慢性疾患看護専門看護師の実践事例に関わりながら、専門看護師の役割を学びます。実習では、病院の退院支援部門、訪問看護、各領域の専門医や看護外来実習を通して、在宅における慢性病者の生活の質に視点をあてた医学的評価およびこれに基づく薬物療法や医学処置等の医学的管理や看護介入について理解を深め、専門的かつ高度な看護実践能力を修得します。実習では、医療機関において慢性病者を受け持ち、慢性病および生活習慣病の予防、症状緩和およびセルフマネジメントに関する看護実践能力を高めるとともに、慢性疾患看護専門看護師に求められる役割を統合して高度な看護実践を発揮できる基本的能力を修得します。

<実習施設>

京都大学医学部附属病院

兵庫医科大学病院

社団法人京都保健会総合ケアステーションわかば訪問看護ステーション

<修了生の動向>

2019年度に最初のコース修了生1名を輩出しています。現在は博士課程に進学して学び続けながら、糖尿病専門クリニックで実践を積み重ね、慢性疾患看護専門看護師を目指しています。

<院生の声>

高度に発達した医療は、人と病いの共存を可能にしました。しかし、病いと共に生きることは様々な苦痛を伴います。慢性疾患CNSコースでは、慢性病者のQOL向上に貢献できるよう、様々な理論や社会制度、技術を学べます。(修士2回生)

急性・重症患者看護専門看護師養成課程

<カリキュラム概要>

専門科目は、「特論」「演習」「実習」に分かれます。

「特論」は過大侵襲による各臓器への影響、各臓器機能を代替する機械的補助の理解と共に、クリティカル期の主要な治療法やガイドライン等の理解、全人的な「人」を理解するための看護理論・モデルを学修します。「演習」は過大侵襲下にある患者・家族へのケア、全人的苦痛を抱える患者・家族のへのケア、クリティカルケア特有の倫理的問題への理解と患者・家族が抱える倫理問題の解決や(代理)意思決定支援、看護師の倫理的ジレンマの解決に向けた倫理コンサルテーション、クリティカル期にある患者・家族及び医療職者を支援するための高度実践看護師としてのあり方を学修します。「実習」では、集中治療医とともに治療計画を検討する実習1、患者・家族の複雑な問題を解決する実習2、患者・家族の問題解決のための医療職者への支援を行う高度実践看護師としての役割を果たす実習3となっています。

<実習施設>

京都大学医学部附属病院

奈良県総合医療センター

東京医科大学病院

社会医療法人河北医療財団河北総合病院

埼玉医科大学国際医療センター

<修了生の動向>

2021年度:修了生が1名 大学病院でプレCCNS活動中です。

<院生の声>
クリティカルな状況にある患者さんやそのご家族を理解するために必要な、生体反応や治療、理論について学び根拠と結び付けることで臨床知が少しずつ統合されていくことを実感しています。今後実習を通じて、学習したことを整理するとともに、理解を深めていきたいと思っています。(M1

大学院では講義や実習を通して、臨床では気づくことができなかった様々な看護の視点や方略を学ぶことができ、その度に看護の奥深さを実感し、大変貴重な時間を過ごしています。また、先生方や院生と看護について話し合える大学院の環境は、自身の価値や看護観を振り返る大切な機会となり、日々充実した院生生活を送っています。(M2

精神看護専門看護師養成課程

<カリキュラム概要>

サブスペシャリティとして地域精神看護とリエゾン精神看護の2コースがあります。精神看護の基盤となる理論や知識、技術を修得したのち、上記サブスペシャリティのいずれかを選択し、より専門性を高めていきます。講義・演習・実習では、教員や精神看護専門看護師とのディスカッションを通して学びを深め、高度な実践力を養います。

<実習施設>

京都大学医学部附属病院、他

ダブルアポイントメント教員の活動紹介

・榊 由里 准教授/急性・重症患者看護専門看護師 医学部附属病院 看護部管理室 看護師長

京都大学医学部附属病院において、急性・重症患者看護専門看護師として、コンサルテーション・倫理調整・病棟における重症事例のケアなど、組織横断的に活動しています。大学では専門看護師の教育、臨床研究に取り組んでいます。クリティカルケア領域における家族ケア、救急看護領域でのエンドオブライフケアなどを探究し、高度な実践能力を発揮し患者の良好なアウトカムを導くことを目指し、日々実践を重ねています。

・古谷 和紀 助教/老人看護専門看護師 医学部附属病院 看護部管理室(教育担当) 副看護師長

病院では、老人看護専門看護師として組織横断的に認知症高齢者ケア、せん妄ケアに取り組みながら、看護部教育担当として現任教育に携わっています。大学では、慢性疾患看護専門看護師の養成や老年看護関連の授業を担当しています。看護実践と教育・研究の橋渡し役として、現場の看護スタッフや学生とともに学び合いながら経験を共有し、よりよい看護を提供していきます。

三井督子 助教/精神看護専門看護師 医学部附属病院 看護部管理室 看護師長

2023年7月より着任しました。病院ではリエゾンチームのメンバーとして精神的なケアが必要な患者さんのコンサルテーションを行ったり、倫理的な課題への支援のための倫理ラウンドを行ったりするなど組織横断的な活動をしています。

また、精神疾患のある患者さんと家族に対して、外来で看護面接を行う準備を進めています。

実践知を統合し成果とすること、そして新しい知見や理論を実践に組み込んでいくこと、双方向の役割をしっかり担っていきたいと思います。